パドヴァ大学の建物の一部です。『ボー(Bò)』というのは牛を指す”ブエ(Bue)”のヴェネト訛りの言葉。大学がこの地を構えた時代には、近くに牛屋通りがあり、ここにあった建物は、当時宿泊施設としてシンボルマークを牛としていたことから、この名で親しまれています。パドヴァ大学の校章にも、牛が表現されれています。
大学の歴史は古く、パドバにおいてその原形が築かれたのは1222年。イタリアでは、ボローニャに次ぐ第2番目の大学として知られています。その当時のボローニャ大学の教授や学生ら有志が、戒律のない更なる自由な学問・思想・文化交流の場を求め、この地に辿りついたことからその歴史が始まっているといわれます。大学として体系化されたのは1399年とされ、当時は、哲学・医学部と法学部の2部構成でした。
同大学の特徴のひとつとしては、宗教や民族の壁を持たなかったこと。ヨーロッパでは初めてユダヤ人を受け入れた大学であり、戒律の厳しいカトリックの国では稀な存在でもありました。
15世紀より、2-3世紀に渡る間は、この地がヴェネツィア共和国下であったという背景(カトリック教会からの圧力からの保護があったことなど)から、大学としての個性化及び進化が著しい時代だったとされています。特に医学、解剖学の分野における進歩は目覚ましく、その中でもこの大学において偉大なる業績を残した人物は、ガリレオ・ガリレイでしょう。1592-1610年に同大学にて教壇に立ちながら自身の研究を続け、後世に残る偉業もパドバにて生まれています。彼自身も生涯のなかで最も充実した人生をパドバで送った、と綴っています。
現代医学に偉業を成し遂げたとされ、1545年に開園した大学付属の植物園『オルト・ボタニコ』が薬草研究のために発足した、というのと同歩しています。
また、1595年に完成した世界初の人体解剖室を持ったことも大変有名です。医学の分野としてはもちろん、広範に学問の現代的発展においても影響のある大学のひとつとして、同学独自なる画期的学問の分野を切り開いた場であったことが窺えます。
その後、800年代直前のヴェネツィア共和国の終焉とともに、大学はイタリア国家下に置かることとなります。大学の多くの教授及び生徒たちはそのころに起こった運動である、イタリア国家統一運動リソルジメントに積極的に参加。1848年2月8日は、オーストリア軍に対し、パドヴァの、そしてイタリアの独立を求めて戦った日。現在も、大学や地元人にとっての大切な記念日となっています。この日を記した通りの名が残る”1848年2月8日通り Via 2 febbraio 1848″ はまさしく同建物が面する通り。その後も世界大戦中には対ファシズムの動きをとるなどの社会的・思想的な自由を掲げるという同大学ならではの堅固な姿勢を取り続けてきました。
現在残る建造物の主要なものは、1542-1601年に建築されたもの。ベルガモ出身の建築家、アンドレア・モローニにより建設が始まりました。彼の亡年1560年以降はヴィチェンツァで活躍した建築家、ヴィンツァンツォ・スカモッツィがその仕事を受け継いでいます。
中庭から続く階段、そして美しい柱廊を配したネッサンス様式が特徴。もちろん、現在でも現役です。教室及び、ラウレア(卒業)もこの建物内にて行われ、また大学関係を問わず、重要な会議なども行われる部屋もあります。これらの一部は一般公開されており、見学が可能です。
建物内の見学としての最大の見所は、もちろん世界初の解剖教室である、テアトロ・アナトミコ。1594年に建築された、逆円錐型の6階仕立ての楕円状の木造らせん階段教室です。最大300名収容といわれるこの階段教室は、その当時、もちろん空調設備どころか窓もなく、生徒自らが手に持つロウソクの灯りにたよっていました。そのため、解剖実験中には酸欠やら何やらで倒れる人が続出したのだといいます。ちなみに解剖は冬期のみ催行され、1シーズンに男性と女性それぞれ一体ずつが検体に使われていた、といわれます。
現在は解剖台があった場所には重ねて床が貼られ、その当時のままの姿を見ることはできませんが、実際には、逆円錐の頂点(床面にあたる部分)に台をおき、人体解剖が行われていました。それを300人の学生たちが上から覗きこんでいたのでしょうが、実際に訪れると、その内部は意外にも小さいことに驚かされます。そして、らせん階段にぎゅうぎゅう詰めに並んで立っていた学生たちが握っていたであろう手すりは、大変に美しい彫りが施されていることが解ります。
そして、建物内の見学には、同大学にて物理、数学を教授したガリレオ・ガリレイが実際に立っていた教壇も見ることができます。歴史ある部屋の数々は、非常に興味深い場所。
さらには、パドヴァ大学にて1678年10月、世界で初の女性として大学を卒業した、エレナ・ルクレツィア・コルナーロ・フィスコピア氏の哲学博士としての記念碑も残っています。
イタリアで2番目に古い大学だそうです。最古はボローニャ大学。ガリレオやコペルニクスもくぐった門は威厳があります。(2018年4月)
パドヴァ大学の基本情報
名称 | Bo Palace(パドヴァ大学) |
---|---|
おすすめ | |
住所 | Via VIII Febbraio, 2, 35122 パドヴァ |
行き方 | パドヴァ旧市街のほぼ中心 スクロヴェーニ礼拝堂からまっすぐ南へ徒歩8分 |
電話番号 | +39 0498273939 |
休館日 | なし |
開館時間 | 月・水・金曜 15.15, 16.15, 17.15 火・木・土曜 9.15, 10.15, 11.15 |
入館料 | 大人12ユーロ |
その他 |
|
サイト | https://www.unipd.it/visitebo |