ワインの小窓
フィレンツェの街を歩いていると、建物の所々に小さな小人の家のドアの様なものがあります。
多くはルネッサンス時代からあるような古い建物の壁にあることが作られています。これがBuchetta del Vino(ブッケッタ・デル・ヴィーノ)と呼ばれるもので、直訳するとワインの小さな穴、最近ではワインウィンドウ(ワインの小窓)として知られる様になりました。
現存する180以上のワインの小窓
小さな窓の大きさは大体20cm x 30cmくらい、フィレンツェでキャンティワインを飲んだことのある方ならご存知かもしれませんが、下の方がふっくらした瓶に藁が巻かれているフィアスコと呼ばれるワインの瓶が丁度通るくらいの大きさです。この小窓は5世紀に渡ってフィレンツェに存在し、ワインを直接購入できる場所でした。
元々は貴族などが郊外の彼らの所有している土地で一族で飲むためのワインを作らせていたものを次第に小窓から販売するようになったのですが、この小窓が一番多く作られたのは17世紀にトスカーナ大公のピエトロ・レオポルドがワインの販売を自由化した頃だったといわれています。
19世になるとフィレンツェの旧市街の人口が減り、既に瓶詰めされたワインを購入する方が便利ということもあって、多くの小窓が塗り潰されたり他の使われ方になっていくのですが、2015年10月にフィレンツェでBuchetta di Vino協会が誕生し、研究や資料の作成などが進みました。現在ではフィレンツェ市内に180箇所、そのうち歴史的旧市街には154のワインの小窓が存在しています。
ワインの小窓はお店によって大きさ・形は様々です。小窓を巡って写真を撮るのも流行っています。インスタ映えもするので、ワインの小窓巡りもおすすめです。
ペストからコロナで復活!
フィレンツェの学者であるフランチェスコ・ロンディネッリ(Francesco Rondinelli)が書いた1634年の文献にもこの小窓が登場します。当時はヨーロッパでペストが大流行して、ワインを販売していた人々はワインを小窓越しに渡し、お金を銅製の板の上に置いてもらい、コインを回収する前にはお酢で消毒をして感染予防をしていたというのです。
2020年の5月、世界的な新型コロナウイルスのパンデミックでイタリアが最初のロックダウンとなった時、ワインの小窓をペスト流行時の様に再び有効活用する店舗が出てきました。店内での飲食が禁止され持ち帰りのみが可能となった時に、フィレンツェの旧市街にあるいくつかの店がこの小窓から商品を提供することを始め、海外のニュースでもワインの小窓が注目される様になったのです。
今では世界中から再び観光客が訪れる様になったフィレンツェの旧市街、いくつかの店舗では引き続きアペリティフやワインを小窓から沢山の人々に提供しています。
ワインの小窓の基本情報
名称 | Buchetta del Vino(ワインの小窓) |
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おすすめ | |
住所 | Via delle Belle Donne, 11/13r, 50123 フィレンツェ |
行き方 | フィレンツェの中心地 |
電話番号 | |
休館日 | |
開館時間 | |
入館料 | €20-€30 |
その他 | |
サイト | https://buchettedelvino.org/home%2520eng/ |
フィレンツェ県公認ガイド20年の私が歴史ある街をご案内します。花の大聖堂、ウフィツィ美術館、アカデミア美術館、シニョーリア広場などをわかりやすいエピソードを添えて楽しく解説・ご案内します。『フィレンツェ公認ガイドツアー』
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