ローマの観光名所⑤ パンテオン神殿はミケランジェロも『天使の設計』と賞賛

ローマ パンテオン神殿 ローマ

2023年7月4日から入館が有料になりました

今まで無料でしたがパンテオンの入館が有料になりました。2023年7月時点では入館料が5ユーロかかります。予約した場合、予約料1ユーロが加算され、合計6ユーロです。
パンテオン公式サイト:詳細と予約はこちらから。https://cultura.gov.it/luogo/pantheon

パンテオンとは

ミケランジェロが「天使の設計」と賞賛したローマ建築神殿。2000年も昔の神殿が今も完全な形に残っています。パンテオン広場を含めて夜のライトアップは必見です。日が暮れた後、ライトアップの美しい「トレヴィの泉」「パンテオン」「ナヴォーナ広場」を散策するのがアーモイタリアお勧めのルートです。

2000年生き続ける万神殿「パンテオン」

ローマ 夜のパンテオンとロトンダ広場
夜のパンテオンとロトンダ広場は幻想的で数倍美しいです。ナヴォーナ広場と一緒に夜のローマを楽しんでください。

パンテオンという言葉には「万神殿(あらゆる神を祭った神殿)」という意味があります。(PANは「全ての」「全部の」、TEOSは「神」あるいは「神聖なもの」を意味するギリシャ語由来の接頭辞です。)
今日のイタリアは圧倒的なカトリック国家ですが、この建物はもともとローマの神を祭る神殿(tempio)だったのです。初代ローマ皇帝のアウグストゥスの側近であったアグリッパという人物が紀元前25年前に建設しました。
初代パンテオンは建設からおよそ100年後のD.C.80年、火事によってその姿を消してしまいましたが、紀元後118年から10年の歳月をかけてハドリアヌス帝が再建した第2世を現在私たちは目にすることができます。

三角屋根のラテン語にも注目

ローマ パンテオンの三角屋根
ここに「ルキウスの息子アグリッパが3度目のコンスルの時に建造」というラテン語が刻まれています。このように正面から建物を眺めると三角屋根と後ろのドームの不思議な調和が楽しめます。

ローマ市内の建物を見るときにいつも気になるのが建物に書かれた文字です。
パンテオンの三角屋根の部分には次のようなラテン語が彫り刻まれています。
M. AGRIPPA L. F. COS TERTIUM FECIT(ルキウスの息子マルクス・アグリッパが三度目のコンスルのとき建造)
M. AGRIPPAとは先に述べたアグリッパ(マルクス・ウィプサニウス・アグリッパ)のこと、L.はアグリッパの父ルキウスの頭文字、F.はFIGLIO(息子)の頭文字です。
ハドリアヌス帝が、この建物を最初に建てたアグリッパにどれだけ敬意を示していたかを伺い知ることができます。

その美しさ故、生き残った神殿

ローマの神に対する信仰は次第に薄れ、信仰の対象はキリスト教へと変遷していきました。元々キリスト教の教会として作られたわけではないこのパンテオンはその時代の変遷に伴って壊されてもおかしくなかったと思われますが、その神秘的な内部空間の素晴らしさからか、破壊されることなく、カトリックの宗教施設へと役割を変えて守られ、現在も使われ続けています。

天井にぽっかりと口を開ける大きな穴

ローマ パンテオン神殿の目
ローマの青い空はいつ見ても美しいですが、パンテオンの穴(occhio目)から見上げるとまた格別です。ときどき鳥が上空を通過するのが見えたり、円形に切り取られた自然と自分自身が不思議に一体化していく感覚を味わうことができます。

建物の形状を簡単に言い表すと○△□の組み合わせ、と言えます。巨大な球体を、それがすっぽり入る立方体に収め、更に前面に三角屋根を取り付けると、この建物のおおよその形ができます。球体の頭頂部は四角い箱で覆わずに、三角屋根の陰からのぞかせるようにします。更にてっぺんにぽっかりと穴を開けます。
この穴が建物の内部空間に与える影響は絶大であり、実に圧倒的です。全てがこの穴のためにある、またはこの穴がパンテオンの真骨頂であると言ってもいいかも知れません。穴から射す太陽の光を見ているだけでも何とも言えない感慨に浸ることができ、何時間でもここに居たい、という気分になります。

短期完成の秘訣は?

ローマ パンテオン神殿の後ろ姿
後ろ側から見たパンテオン。まるでガスタンクのようでちょっと不恰好ですが、こちら側に回って見ると建物の元々の高さがよく分かります。

直径9mのこの穴はパンテオンの「occhio(目)」と呼ばれています。ラテン語のoclusという言葉もしばしば使われます。丸という形は無限性と偏在性の象徴と考えられますが、この特異な形の屋根を、現代のような技術の無い時代に、どのようにして10年間という短期間で作ったのか気になるところです。
一説には、まずは円筒形の建物の形を作り上げた後、壁の内側に土と金貨の混合物をぎっしり詰め、更に壁の上部にまで盛り土のようにしてこれを積み、その上に軽石でドーム型の屋根を乗せ、最後に民衆に「中の金貨を取っていいですよ」とお触れを出すことで超スピードでの内部の空洞化を実現することができたという話があります。当時この界隈(特にパンテオンの正面の広場Piazza Rotonda)には常に多くの人が集まりのみの市などを開催しており、法王AlessandroⅦなどは、あまりの賑わいぶりに、市の開催を禁止したほどですから、貧しい人々が金貨目当てに一斉に中の土を取り去ったという伝説ももしかすると本当かも知れません。

パンテオンにまつわる「ことわざ」もあります

ローマ テベレ川氾濫時の水位マーク
ローマの道を歩いてみると、19世紀のTevere川の氾濫時の最高水位が示された石版を発見することができます。

19世紀半ばになるとTevere川の氾濫が盛んになり、広場もしばしば水底に沈むようになりました。今でもPiazza Rotondaを取り囲む建物の壁には、その当時の最高水位を記録した石版が残されています。Rotondaとはもちろんドーム屋根が特徴であるパンテオンのことで、ローマ方言ではRitonnaとも言います。
ローマのことわざにこんなものがあります:
Chi va a Roma e nun vede la Ritonna asino va e asino ritorna.
「ローマを旅し、パンテオンを訪れぬ者は愚者で現れ愚者と去る。」
(せっかくローマに来たのにパンテオンに行かなければ勿体無い、いや、そんな人はバカものさ。例え元々がバカでもパンテオンを目にすれば少しは感化されて英知が宿るかも知れないのに。)というようなローマのシンボルであるパンテオンへの敬愛の念とローマ人たる誇りをローマっ子らしく表現した言葉です。

バルベリーニの誤り

ローマ ロトンダ広場とオベリスク
パンテオン神殿前にあるロトンダ広場とオベリスク

多くのローマ人に愛され、守られ続けてきたパンテオンですが、中には建物に危害を加えた人物もいました。Barberini家出身のUrbanoⅧなどはその最たる例です。彼は建物の前面に施されていたブロンズの装飾を全て取り去り、これを80の大砲に作り変えてCastel S. Angeloに設置しました。
ローマっ子精神の化身とも言われるPasquinoという人物がQuod non fecerunt barbari, facerunt Barberini(ローマで破壊されたものの内、異民族が破壊したもの以外は全てバルベリーニ家の仕業だ)という言葉を残していますが、ここで言うバルベリーニ家とは特にUrbanoⅧのことを意味しています。彼は建物の一部を取り去った他、自らの足跡を残すためか、鉄の扉や、内部のピンク味を帯びた柱など、建物の風合いを損なうような不釣合いなものを勝手に取り付けたりもしました。

ラファエロやエマヌエーレ2世のお墓もあります

ローマ パンテオン神殿の夜
パンテオン内部から柱越しにロトンダ広場を眺めた景色。夜は広場全体がライトアップされていて見事な景観です。

その他19世紀後半からは各界の重要人物がここに埋葬されるようにもなり、ラファエロや、ローマの王様であったVitorrio EmanueleⅡやUmbertoⅠのお墓が建物の中に安置されている他、Caravaggio, Barnini, Velasquez, Vanvitelli, Canovaなどの著名画家の作品集もここに保管されています。
また、毎年一度カトリックの行事であるPentecoste(五旬節:聖霊降臨の大祝日)の日(Pasqua復活祭から数えて50日目)にはRosa d’Oraと言って、カトリック教会に尽力した人々を讃えて、丸屋根から7百万枚もの赤いバラの花びら(毎年決まってGiffoniという場所から取り寄せたバラを使っているとのこと)降らせる行事が行われています。一時期は途絶えた伝統ですが、1995年から再開し、2009年5/31にもこの美しい光景を多くの人が目にしました。2010年のPantecosteは5/23です、是非お見逃し無く。Rosa d’Ora自体はパンテオン以外のカトリック教会でも見ることができますが、43.2mもの高さの天井に空いた9mもの巨大な穴から真紅の花びらが舞い降りる光景はパンテオンでしか見られません。43.2mという数字はこのドームの直径でもあり、その大きさは実にS. Pietroのcupolaをも1m上回ります。

ローマに来たら是非訪れるべし

日本を代表する建築家、安藤忠雄氏も、ローマにおいて、世界において非常に重要な、また自身にとって意味深い建築のひとつとするパンテオン。シンプルでありながらも圧倒的な存在感を誇る形状、構成美が物語る力強さを丸屋根の下で是非とも体感してみて下さい。Oculusに切り取られた丸い青空はきっとローマの美しい思い出の1つになるでしょう。

スタッフ

『パンテオンを見ずしてローマを去る者は愚者なり』 

という言葉があるように、ローマで必見のスポットです。お勧めは青空の見える日中ですが、時には夜のコンサートなども催されます。ドーム建築のためエコーが強く、演奏に適した建物とは言えませんが、夜のローマのお散歩は最高に素敵なので、ぜひコースに入れてください。日中はパンテオン前広場には大道芸人が多いので、見とれてスリ・窃盗に遭わないよう注意しましょう。 

イタリア在住:堂 剛 スタッフ一覧

パンテオン神殿の基本情報

名称 Pantheon(パンテオン神殿)
おすすめ
住所 Piazza della Rotonda, 00186 ローマ
行き方 ナヴォナ広場、トレヴィの泉から徒歩5〜10分
電話番号 +39 347 8205204
休館日 なし
開館時間 月-金 8:30-19:30
日曜日 9:00-18:00
祝日 9:00-13:00
入館料 5ユーロ(+予約料1ユーロ)
その他 ミサの時間:土曜日17:00、日曜日10:30
ノースリーブや短パンなど肌の露出が多い服はNG
サイト https://www.pantheonroma.com/
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