アルキジンナジオ館と解剖劇場

ボローニャ大学 アルキジンナジオ館と解剖劇場 ボローニャ
アルキジンナジオ館の建物に入ると見事な2層の回廊。地上階の部屋は現在財団関係者のもので見学することはできません

ヨーロッパ最古の大学をまとめた大学棟

ボローニャといえば、1088年創立のヨーロッパ最古のボローニャ大学が有名です。このアルキジンナジオ館(Palazzo dell’Archiginnasio)は、当時の枢機卿カルロ・ボッロメオとピエールドナート・チェージの要望で各地に点在していた大学施設や教授、学生たちを一箇所にまとめ、さらにはボローニャ大学の地位を高めるために、大学棟として1562年に着工され、翌年1563年に建てられました。ボローニャの建築家テッリビアの名称で知られるアントニオ・モランディの設計で、建物の外観は30アーチにもわたるポルティコが137mのファザードに規則正しく連なり、建物の中は回廊に囲まれた2階建になっています。

学部と図書館

中庭の時計はボローニャ大学が現在の所在地に移る1803年まで200年以上にわたり授業開始の鐘を鳴らし続けました。入り口を入ると左右に階段が別れ、左側が学芸学部(哲学、医学、数学、物理、自然科学など)、右側が法学部(民事法、教会法)へ上がる大階段となっています。地上階には教授たちの講師室が、2階部分には10の講義室があったとされ(現在は市立図書館の書庫)、各学部1つずつSala magnaと呼ばれる大講義室(広間)がありました。右側の法学部の大講義室スターバト・マーテルの広間は見学することができます。学芸学部の大講義室は現在市立図書館の閲覧室となっており、観光目的での見学はできません。ボローニャ大学で学ぶ留学生でしたら、ぜひ歴史ある建物の中で自習してみてはどうでしょうか。

見どころは6,000以上あると言われる紋章!

建物内の天井や壁には当時のボローニャ大学の卒業生の紋章や著名な教授たちの記念碑で飾られています。紋章に刻まれた文字は出身地を表し、イタリアに限らずヨーロッパ各地から学生や優秀な学者がここに集まってきたことを物語っています。当時、初のアメリカ大陸人学生はペルーからだと記録に残っています。

解剖劇場は必見です!

ボローニャ大学では解剖学も学問として進んでおり、ここでは17世紀の解剖学教室(Teatro Anatomico)を見学することができます。世界で最初の解剖学劇場は1594年のパドヴァ大学だと言われており、ボローニャ大学のものは1563年の大学棟建設の74年後1637年に設けられました。ちなみに「解剖学」を教育学として講義を行なったのが、1315年ボローニャ大学で教鞭を取ったモンディーニ・ディ・ルッツォとされています。教室全体が木製で作られており、香りの高いモミの木を使うことで、解剖中の死体の匂いを減らすためと言われています。

当時のキリスト教では人体解剖を正式に認めておらず、毎回解剖を行うために教会からの許可が必要だったそうです。また教会関係者が抜き打ちでキリスト教に背く教えを授業の中でしていないかチェックしに来ていたそうで、その名残が、入って左の壁の上部に開閉できる木製の窓(記念碑のように見えます)で、そこから教授に学生たちの前で公開問答をしていたと言われています。(覗き穴があったという説もありますが、文献には残っていません。)

周りの木像にも注目!

教壇の両脇にはスペッラーティ(皮を剥がれた人)と呼ばれる二体の像があり、その上の天蓋には医学の偶像のメディチーナと天使が備えられ、人体の解剖という神秘的な空間を見守っているようです。天使は通常だと弓矢や花を持っている姿をよく見ますが、この天使は医学の神に仕えるということで、大腿骨を持っているのが印象的です。

四方の壁には歴代の有名な医学博士、医師たち、ガレノスやヒポクラテスなどの木像が並んでいます。その中でも興味深いのが、入って左奥にいる形成外科医ガスパリ・タリアコッツィ。左手に持っているのはなんと!?人間の鼻なのです。当時の戦争は剣での戦いが主流だったため、鼻先や唇を切られてしまう兵士たちが多かったようです。ガスパリは上腕部分に切り込みを入れ、その中に顔に接合した鼻先を入れ、腕は顔の前で固定し、治癒力を高めて早く直すという手法を生み出しました。
また天井の装飾は占星術に基づき光明の神アポロンをはじめ、14の星座の装飾を見ることができます。マクロからミクロという宇宙と人体の繋がりを象徴しているかのようです。

1944年の世界大戦時に爆弾によりアルキジンナジオ館は多大な被害を受け、この教室も大破しました。幸運にも火事にはならなかったので、破片を集め、戦後すぐに修復が行われ当時の姿を取り戻しました。壁の木像をよく見ると、継ぎ接ぎしているのが見て取れます。出入リ口に修復作業の写真がありますので、そちらもご覧ください。

もう一つの見学できる場所、スターバト・マーテルの広間

法学部の大講義室だった場所は、現在スターバト・マーテルの広間と呼ばれています。1842年にロッシーニ作曲のスターバト・マーテル(オペラ)を演奏したことを記念して名付けられました。この部屋にも記念碑や、ドイツ地方の紋章などが見られ豪華な装飾が残っています。広間に入って右奥に行くと、書庫が連なっている扉があります。10つに分かれていた教室を現在は壁を貫き、図書館の書庫として利用しています。8万冊の文献が保管されています。
この広間へは解剖劇場に入る際に購入したチケットを見せてください。

スタッフ

ボローニャで一番のおすすめスポットです 

現在の大学は メイン通りのVia Zamboniをはじめ街の各地に学部、学科が分かれて点在しています。ここでは大学の歴史を身近に感じることができます。約6,000個あると言われる紋章は一度ナポレオンによるイタリア遠征の際に破壊されそうになりましたが、ボローニャの美術団体が一時的に白い漆喰を塗ることで現在まで保たれることになりました。何度行っても新しい発見ができる場所で、ボローニャでの一番のおすすめスポットです。 

ボローニャ在住:吉森 恵子 スタッフ一覧

アルキジンナジオ館の基本情報

店名 Biblioteca comunale dell'Archiginnasio(アルキジンナジオ館)
おすすめ
住所 Piazza Galvani, 1, 40124 ボローニャ
行き方 マッジョーレ広場から徒歩3分
電話番号 +39 051276811
定休日 なし
営業時間 月-金:9:00-18:00、土:9:00-19:00、日曜、祝日:10:00-14:00
その他
サイト http://www.archiginnasio.it/
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